マリクがと暮らし始めて、もう今日で5日になろうとしていた。

昨日は何もなかった・・・・・・・といえばなかったのだが、相変わらず周囲からの質問は続いている。

(ったく冗談じゃない、あれじゃスキャンダル起こしたアイドル並・・・・・って私はアイドルでもないしアイドルの方が辛いんだろうな)


そんなことを帰り道で考えながら、は溜息をついた。

家に帰ればマリクがいる。 興味本位で家事を邪魔されることは避けられない・・・・・・・・・

別にストレスが溜まっているわけでもなく、マリクが邪魔だとは少しも考えてはいないのだが。

「あ・・・・・・久しぶりに、気分転換でもしてみよっかな」

その瞬間、曇っていたの表情は見事に輝き始めた。

そして、は家に向かって走り出すのだった。

(マリクが来てから、弾けなかったもんなぁ・・・・・)


・・・・・・・・・それが、きっかけとなることも知らずに。








6.記憶の欠片









 「たっだいまー」

・・・・・・・返事がない。

「マリク? いるんだろ、おい」

鍵は掛かっていなかったから、家にいるはず・・・・・・・いや、あるいは鍵を掛け忘れて出かけたのかもしれない。 不用心な・・・・・・

「マリクー」

『ガタ』


物音。 音のするその先は・・・・・・・

「・・・・・まさか、な・・・・・・」



 「・・・・・・ん、お前か」

「いやお前かって、この家私しか来ないからさ多分。 つか何してんの」

「・・・・・・・・・・これは何だ?」

の予想は見事的中したようで、マリクはまだ一度も入ったことのない部屋にいた。

「・・・・・・ピアノ、だよ」

「ピアノ?」

「あぁ、ピアノ」

好きだからね、とは椅子に座り、深呼吸する。 マリクも静かにそれを見ていた。

「・・・・・・・・行くよ」

やがて、は鍵盤に手を置いて、すっと息を吸う、そして。









 ―ずっと君だけを 見つめていただけ それだけで 何もできない―


   『それに耐えられず 飛び出した先には 輝かしい未来の記憶』


 ―絡まってる 紐を解くように 導き出したの―


   『誰よりも 大切な そう君と 共に 生きることを...』





 ―この気持ちに 私でさえ 気付けなかったよ―


   『君のもとを 離れること ずっと恐れていた』



 ―この場所から いつか君が いなくなってしまうとしても―


   『そう今だけは 君の傍に いると 誓えるはず』





 ― 『君の傍にいさせてよ 行かないで“Dearly Beloved”......』 ―
















 「・・・・・ふぅ・・・・・・あれ、どうした?」

「・・・・・・・・・!」


「・・・・お〜い」

「・・・・・・・・あ・・・・・・・何だ?」


しばらく呆然としたような表情をしていたマリクの前でが手を振る。

「弾き語りだったんだけど。 変、だったかな・・・・・・・」

「・・・・・・・お前が作ったのか?」

「あぁ、そうだけど」

マリクの中で、の声と誰かの声が、重なっていた。

そして、何故かこの歌を知っているような。

「・・・・・・・・気のせいか・・・・・・」

「何が?」

「何でもねぇよ」

「そっか」

はピアノを布で拭きながら、はぁ、と溜息をついた。






 「この歌さ、歌詞も曲も何かパッと浮かんだんだよね」

「・・・・・・・・・」

「でも・・・・・今まで、弾き語りしたことなかったんだ」

「?」

ピアノの蓋を静かに閉め、は微笑む。

「何か、誰にも聞かせられなかった」


「下手だと思ったから、かァ?」

「まぁそれも少しは・・・・でも、マリクには聞かせてもいいかなって思ってさ、初めて歌ったんだよ」

「初めて?」

「あ、でも・・・・・何か、初めて弾いたような感じしなかったんだよね」


前にも弾いたことがある、という感じはする。 だが、実際弾いたのは初めてだ。

「気のせいかな・・・・・・・」

「・・・・・俺も、前に聞いたことがあるような気がしてな」


「へ?」

ありえない、とは思った。

マリクは別の世界から来たと考えられる上、記憶をなくしている。

そしてこの曲はまぎれもなくが作った曲。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・い・・・・・・・・おい、


「え、あ、はい?」

「何だァ、いつにもましてボーッとしてんじゃねぇよ」

「あ、うん・・・・・・・・ごめ・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

バタリ、との身体が倒れた。

「!!・・・・おい!」


返事はなく、静かに眠っているようだった、が。

「・・・・・チッ・・・・・・・・」

































  少しずつ思い出す、記憶の欠片は何処に































































  

ちょっと短めかなとも思いつつ第6話はこれでおしまいです。 続きます。
ほ、ホントはもっと後にしようと思ったんですよピアノ弾かせるのは! 告白か何かの時にしようと思ったんですよ!
ちなみに作詞は私ですが曲はある歌を頭に置いてみました。 分かった人はすごいと思う。
最後の意味は『大切な人』です、多分。 『You're My Jewel』と迷ったんですが・・・何か表現違う。
さんピアノが1番スゴイです、数ある才能の中で。 プチ設定として さんの父親は天才ピアニスト、母親は元人気モデルで今は夫を手伝っています。
次の話はBGM流れます。