『ピンポーン』
「・・・・・!」
あいつか? いや、絶対そうだ。
「あ、ヒカル! おっはよー」
「あぁ、おはよう」
・・・・・・やっぱり。
「・・・・その包み」
「あ、これ? もち、バレンタインのチョコだよ」
「そ、そうか・・・今年は何を作ったんだ?」
去年は苺チョコのトリュフだったが・・・・・
「ふふん、フォンダンショコラだよ」
「フォンダン・・・・・・?」
「えっと・・・ほとんど焼けてないガトーショコラみたいな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・失敗作、ではないな。 こいつが失敗するわけがない。
したとしても、それを持ってくるような奴じゃない。
「結構美味しいんだけどな。 あ、お邪魔しまーす」
「あぁ」
「2人で食べようと思って2つ持ってきたんだけど・・・ちょっと冷めてるね。 電子レンジ借りていい?」
「あぁ、構わない」
「じゃ、ちょっと待ってて」
10秒ほど加熱したと思ったら、すぐに取り出して持ってきた。
・・・・・いい匂いだ。
「じゃーん! 熱いうちに召し上がれ」
「あぁ。 ・・・・・いただきます」
スプーンで掬おうとしたら、中身が出てきた。
・・・・表面の焼けてる部分が少なすぎる気がする。
「1時間くらいで出来るんだけどさ。 180度のオーブンで9分焼くわけ」
「そうするとこうなるのか」
「そ。 美味しいから食べてみなって」
こいつが美味しいと言うなら美味しいんだろうが・・・こいつは人より味覚が寛大だからな。
あの青学の不二にも劣らない激辛好きだというのは、有名な話だ。
だが、甘いものも好きだし、他にも好きな物はいっぱいあると言っていた。
・・・・・・とにかく、食べてみよう。
「・・・・・・・・む、美味い」
「でっしょ〜! 友達に味見頼んだら『私は中まで焼けてる方がいいな』って言うんだよ!?」
「・・・・まぁ・・・・人それぞれ、だからな。 だが、これは美味い」
「ん、ありがと」
話している間に、こいつはもう食べ終わってしまったらしい。 ・・・・早い。
「む・・・・口の端にチョコがついてる」
「あ、ホント? ティッシュちょーだい」
「・・・・・・・・・・・」
「え・・・・・・・あ」
・・・・・つい、身体が先に動いてしまった。
「あ・・・・・その・・・・すまん」
「・・・・あ、ううん。 いーよ、別に」
「そうか・・・・」
俺は、残っているフォンダンショコラを口に運んだ。
こいつと出会ってから、毎年一緒に過ごすこの時間。
これからも、ずっと続けばいいと思う。
(公姫も2009年はフォンダン作りました。 美味しかったー)