スペインへの15時間。

と黒城は変装(?)して飛行機に乗っていた。

「ねみぃ」

「寝ろ」

「やっぱしやだ」

「・・・・・・・・(怒」

はしばらく外を見ていた。








第9話 空の旅と修行の始まり








 「・・・・・・・・ん?」

気がつくと、はその細く華奢な身体で黒城に寄りかかるようにして眠っていた。

(これじゃおれが眠れねぇ・・・)

耳もとで寝息を立てられ、黒城はつい顔を赤くした。

目をやれば、青く透き通るような髪。

アイスブルーの瞳は今は目蓋の下で。

長い睫毛が白い肌に影を落とし、艶めいた唇は薄く開かれている。

いつもの男勝りな口調、男勝りな性格が感じられないのは眠っているので当然だが、男装をしているにも関わらず、『これは女だ』と再確認させられる。

黒城はできるだけ気にせずデッキを組もうとしていたのだが、が気になってどうにも集中できない。

思えば、幻の決闘者・の実力は黒城でさえも知らなかった。

分かるのは、自分よりも遙かに強いということだけ。

いつだって本気を出したことはなかったのだと思う。

(・・・・本気で決闘すると何かあるってのか?)

考えても仕方ないと思い、黒城はなんとかデッキを完成させると、自分も眠りに就いた。




























 一方、は子供の時の夢を見ていた。


「凶くーん!」

「何だ?」

城で暮らすようになってから、は明るく振る舞うようになった。

毎日が楽しいということもあるのだろうが。

「ねーねー、目つぶってて」

「・・・こうか?」

「うん」



『ちゅ』




は少し背伸びすると、自分も目をつぶり黒城の唇にキスした。

「!?・・・・何したんだ?」

「えへへ・・内緒」

はそう言って走っていってしまった。



































あのね、凶くん。

     『ちゅー』って、大好きな人にするものなんだって・・・









































 「・・・・はっ」

が目を覚ました。

自分が寄りかかっているのは、腕と足を組み眠っている黒城の肩。

(なんであんな恥ずかしい昔の夢・・・しかもこんなにくっついてるし・・・)

は1人で顔を真っ赤にした。

(こいつはどんな夢見てんのかな・・・・・・・ザキラを打ちのめす夢か? それとも勝舞に勝つ夢か?

今度はがデッキを組み始めた。

もし自分と同じ夢を見ているとしたら顔も合わせられない・・なんてことを考えながら。

(えーっと・・・進化元のカードは・・・・)

スペインに到着するまでにはまだ時間がある。

決闘でもしたいところだが、あいにく黒城は寝ているし、ソレ以前に真の決闘をこんなところでできるはずがない。

「ふぅ・・・・」

(暇だ・・暇だ暇すぎて死にそー)

音楽を聴いたり、つまらない映画を見たりしても、やっぱり面白くないものは面白くない。

話し相手は寝ているし、その前にここでうるさくするのもあれだ。

寝ようとしても眠れない。

飲み物が運ばれてきたので、はそれを受け取り、テーブルの上に置いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あ、起きた?」

は目を開けた黒城に声をかけた。



それにしても、黒城の格好は可笑しい。

まぁそうしたのはなのだが・・・

「メガネくらい取ったらどうだ?」

「・・・かけさせたのはお前だろーが」

「・・・・・・そうなんだけどさぁ」

はやっと話し相手ができたのが嬉しいのか機嫌がいい。

「着いたらさっさと着替えような、この格好息苦しくてしょうがないんだ」

あれだけ膨らんだ胸にさらしを巻いたらそれはそうだろう。

そして男としては細すぎる身体をごまかすために結構厚着しているので、としては早く普段の格好になりたいものだ。

「・・・・やっぱり暇だ」

することがない。

「決闘のイメトレでもしてるしかねーのかなぁ・・・」

はため息をついてカードを並べ、イメトレを始めた。

(相手が速攻デッキだったら・・防御主体・・・手札操作・・・・・・・クリーチャー除去・・・・・・・・・・・)

しかし、やっぱり実戦でないとどうにもやる気が出ない。



「やっぱ寝る」

「眠れないんじゃねぇのかよ」

「暇だと寝れるんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「じゃ、ちゃんと起こしてね」

はまた寝てしまった。

今度は黒城に寄りかからないようにしていた。

それでも、やけにその姿はキレイで、黒城は目をそらした。

「おい・・・・・・・・」




(男装、できてねぇな)

















 黒城は黒城なりに時間を潰していたところ。

『まもなく着陸致します。・・・・・・・』

「おい、起きろ」

「んぁ・・・?」

目をこすって欠伸をひとつすると、は美しい天秤の絵が描かれたデッキケースをカバンの中から腰につけた。

持っていたカバンの中には、カードが沢山入っていた。


































 懐かしい風景がところどころに残っている。

「4年、いや5年ぶりかな」

「行くぞ」

荷物を持ち、2人はある場所に向かった。

そこは、城だった。












 





2人は、そこで修行を始める。

ザキラを倒すために。















































 「で、ここにいる千体のロボを倒せばDMに会えるってわけか・・・・・・・千って0が3つだろ? キツそうだな」

「おもしれぇ・・・」

「・・面白いのか?」

地獄の修行場。

そこにある10枚の扉。

2人はその10枚を破ることができるのだろうか。

「じゃ、始めよ」

「お前もやるのか?」

「まさかぁ! ついていけないって」

は笑いながら向こうを見た。

この先何重にもなっている、扉。

その向こうにDM・・決闘を極めし者がいる。

(私なんかより、強いんだろうなぁ・・・でもあいつだってこの修行を終えれば、私よりもっと強くなるはずだ)

「目標1日30体・・ってそれじゃ1ヶ月以上かかるな・・」

「ケッ・・・1日100体でもやってやる・・・」

「いや無理だろ、ここのロボは多分戦うごとに強くなるんじゃないか?」

の言葉も聞かず、黒城は1体目のロボと決闘を始めた。






 「チッ・・・・」

「結構時間かかったぞ?」

「うるせぇ」

一筋縄ではいかなそうな修行。

「じゃ、2体目行こう」




思いの外修行は辛いもので、その日はやはり30体しか倒せなかった。



「今日はもう終わりにしよーよ」

「まだだ・・・」

「・・・んなこと言ったって・・・そうだ、メシ食おうメシ」

黒城は聞こうとせずに決闘を続けた。

「・・おーい」


そんな声も届くはずがない。

「・・・・つまんねぇ」

は小声で呟いた。

「なんだ、構って欲しいのかよ?」

いつの間にか決闘を終えた黒城がの方に歩いてきた。

「いや、そんなつもりで言ったんじゃねぇけど・・それよりメシ」

「勝手に食ってろ」


「お、ま、え、が、食うんだよ!」


「・・・お前だけで食ってろ」

「あ、おい!」

黒城はまた決闘を始めた。












 翌日。

「あ〜よく寝た・・・・あれ?」

黒城はすでに決闘を始めていた。

「ほーら、そのロボは戦うごとに強くなるんだよ」

昨日に比べて大分苦戦しているようだ。

「・・・あーもー見てらんねぇ!! 凶死郎、これ使え!」

「・・・・・これは・・・・・・・」

「・・・ま、自然文明でも使うんだな」

は朝食をもらってそれを食べ始めた。

「朝飯くらい食えよ」

黒城はクロスギアのカードを見ながらデッキを組み直そうとしていたが、それにまで苦戦しているようだ。

「いや、だから自然文明使えって」

はまたカードをカバンから取り出し床に落としていった。

自然文明のカードだった。




















 「いい加減にしろーーーーっ!!!!!」

黒城がやっと98体を倒し終えたとき、がキレた。
 
「修行もこれで何日目だと思ってんだ! えーっと・・・3日目だぞ3日目!! メシ食え休め決闘やめろーー!!!」

「うるせぇ」

「いいか? お前が何と言おうと扉を1枚開けたら何か食って休んでもらうからな! はっきりいってお前今かなり怖いし!!」

寝不足、栄養不足、黒城の身体は痩せ細っていた。

「目もなんかだし! 休んだ方がいいって!!」

黒城はそれを無視して99回目の決闘を始めた。

「誰か・・・凶死郎を止めてくれ・・・・・(泣」

そして、99回目の決闘が終わったとき。

最悪のタイミングで、彼が現れた。


































――切札勝舞。





































































  

ちゃん、昔は積極的。 純粋に彼が好きだったんでしょうねぇ・・・
バックする方、第8話はです。