バンナイさんが現れてから、指輪は別室で保管されることになり、私にも護衛がついた。

それなのに、あの指輪はまだ私の指で光ってる。 保管されたのは偽物だ。

指輪は常に私の指にあった。 だからバンナイさんは私に近づいてくる。

でも私達はその裏をかいて、私には偽物の指輪をつけさせ、本物は厳重な警備のもと保管される、という設定。

実際には、保管されてる方が偽物だけど。 大げさなくらい偽物の警備をすることで本物だと思わせるらしい。

普通逆だと思うんだが。 まぁ、指輪はいつも私が持ってたわけだし。

・・・でも、実際護衛つきの生活はかなり息苦しい。

毎日のお茶しながらの会話もなくなった。 ものすごくつまんない。

嗚呼、バンナイさん。 できれば早く来てほしいんですけど。

もう一度ハイエでも誰にでもなって、話し相手になってほしい・・・・ま、新しい人間は入ってこないだろうけど。

ちなみに護衛の人とはそんな和やかな雰囲気にはなれなさそうだ。 畜生。

嗚呼、ホントに早く来てくださいよバンナイさん。








少女盗難事件 2








 あれから1週間後。 そろそろストレスも限界になってきた。

ピアノや勉強をすることはなくなった。 でも庭へ出て遊ぶこともできなくなった。

とうとう夜になったら護衛に文句をつけて、部屋に1人でこもってしまった。 後悔はしてない。

護衛だって部屋の外でしてくれればいいし、窓には鍵もかかって・・・・・・・ないんだな実は。

「・・・・・・はぁ」

ポケットから、あのカードを取り出した。

警察が証拠として持ってったけど、あれは偽物。 本物は私が肌身離さず持ってる。

バンナイさんが唯一残していったものだけど、これを見てるとあの時のことを思いだす。

・・・・思えば、私手の甲にキスされたんだっけ。 まぁパーティーとかに行けばよくあることだけど。

指輪、ソラのモンスターボール、カード。 この3つは絶対に離さない。

・・・・何だか、胸騒ぎがする。









 「おい、交代の時間だ」

「交代? んなもんあったか?」

「あのお嬢さんに締め出されたんだろ? ずっとここで立ってんのもあれだし、お前等は見回り行ってこい」

「そうか、悪いな」

「でも、1人じゃちょっとなぁ・・・・」

「いや、もうすぐもう1人ここに来るよ」

「なら、俺達は行くぜ」

2人の警官は立ち去った。 仲間の顔を見てつい油断したのだろう。

残った1人の警官が不適に笑ったのには、気付かなかった。










 『コンコン』

「・・・・・何だよ」

何かあったのか? それにしちゃ静かなノックだな。

「・・・・・・・・

「!!!」

ドア越しに聞こえたこの声・・・・忘れるもんか。

『ガチャ』


「っ・・・・バンナ「しっ」

警官の姿をしてるけど、この人はバンナイさんだ。

バンナイさんは静かに扉を閉めた。

「やっぱり・・・・指輪を? でも本物の指輪は・・・・・」

「それだろ?」

な・・・・気付いてたか。

「本物を見たことがあるからな。 さすがに気付くさ」

「・・・・盗んでく? これ」

「・・・・・・いや」

バンナイさんは変装を解こうとしない。

、この後すぐ庭に来い」

「庭?」

「あぁ、そこで待っている」

「あ・・・・」

バンナイさんは窓から飛び降りていった。 下を見たけど姿はない。

「・・・・庭、か」

多分、いつもソラと遊んでるあの庭だ。

扉を開けると、やっぱり護衛はいなかった。 私は人目を盗んで庭に向かった。














 「あら、さん。 どうしたの? 護衛は?」

「え・・・・・・」

ジュンサーさん他、ちらほらと警官がいる。 こんなところで?

、無事だったか!!」

「あ・・・・義父さん」

がバンナイに連れ去られて、今庭にいると聞いて・・・・ん?」

いや、それ私も初耳なんですけど。

「何だ、怪盗バンナイなんていないじゃないk !!」

・・・・・・・・・へ?

「なっ・・・・2人!?」

義父さんが、2人!? いや、どっちかはバンナイさんだろう。

「どっちが本物なの・・・?」

警官も困ってる。 確かバンナイさんは変装がメチャクチャ上手いとか。

さっきも警官になってたけど、思い出してみれば、あの顔の警官を見たことがある。

「お前、私に変装したバンナイだな!」

「お前こそ!!」


あー・・・・・・・うーん。

、私が本物だ!!」

「いや 、こっちに来るんだ!!」

顔も体格も声も一緒。 普通なら分からないだろう。

でも・・・・完璧じゃない。 あの眼差しは、バンナイさんだ。

・・・・・ホントは、もっと変装が上手いくせに。











 「ジュンサーさん、これ・・・お願いします」

「えっ・・・?」

私はジュンサーさんに指輪を渡した。 もちろん、本物。

、分かるだろう? 私が本物だ!」

「いや、違う!  、そっちに行くな!!」

「・・・・・・・・・」

私は歩き出した。 ちょうど2人の真ん中を通って。

「私が選ぶのは・・・・・・・」

見た目で見破れなくても分かる。 だって、バンナイさんはずっと言っていた、いや、言わなかった。

『私が本物だ』・・・・って、言わなかった。

さん・・・・・?」

私は2人の少し手前で立ち止まった。 もう一度、考える。

ずっとこのまま退屈な人生を過ごすか、危険を冒してもあの人と一緒にいるか。

・・・・ま、スリル好きな私のことだ。 元から答えは決まってんだけどね。

「・・・・義父さん、ごめん」

「えっ・・・・」

私は走った。 まっすぐ、あの人のもとへ・・・・・・

『ダッ』




 「 ! 私が分からなかったのか・・・?」

「いや、どうやら分かっていたみたいだ」

バンナイさんの声。 やっぱり私は正しかった。

『バッ』

「なっ・・・・・怪盗バンナイ!!」

「こいつは俺を選んだのさ。 予告通り、盗んでくぜ」

バンナイさんは私を横抱きにして、ジェット噴射のスイッチを入れた。

警官がまっすぐこっちに来たけど、もう遅くて。

「では諸君、さらば!」

・・・・私達は、夜空に消えた。



 「さん・・・・変装が分からなかったの・・・?」

「いや・・・娘は最初から見破っていたようですよ」

「え、じゃぁ・・・・この指輪は・・・・・・」

「はい、バンナイはそんなもの眼中になかったようです」

見上げた月は、とても綺麗だった。
















 「バンナイさん、その、指輪・・・・」

「あぁ、あれならもういらん。 『一番』はひとつだけだろう?」

「・・・・そっか」

どこに向かってるんだろ。 それより重くないかな・・・・・

「それより・・・・後悔はしてないんだな?」

「もちろん、してない」

「フン・・・・そうか」

・・・嗚呼、今日も月が綺麗だ。

月光に照らされたバンナイさんはかっこよかった。 月は私みたいな人間でも乙女思考にしてくれるらしい。

「バンナイさん・・・・好き、です」

「・・・・・やっぱりな」

風が気持ちいい。 バンナイさんの顔が近づいた。

「んっ・・・・・」

「・・・ ・・・・・愛してる」
























 その日から、私は社長令嬢じゃなくなった。

昔の私にとっては『社長令嬢』の肩書きがものすごく魅力的に感じられたけど・・・・

今はそれ以上に、『怪盗に盗まれたもの』の方が、とっても嬉しい。

・・・・・好きです、バンナイさん・・・・・



































































いや、ここまで一気に書けたの久しぶり。 前の1話からノンストップ。
ここまで書いておきながらバンナイの口調が分からない件。 おてんき研究所の回も見れたらいいんだけど。
今は焼津にいるので、リボンカップのDVDしかないんですよね。 あのかっこつけ口調難しい。
ホントはマグマ団時代から彼女ってのも書こうと思ったんですが、これでシリーズにしたいと思います。
それにしてもヒロイン、乙女だなぁ。 まぁ題材が題材なだけに。